プロフェッショナリズムを追求する旅

戦略コンサルタントという理解し難い職を通じて感じるところ等々、徒然に書いて行きます

「コンサルタント」と「コンサルファーム」は別物

私は「コンサルタント」という仕事は非常に楽しいと感じている一方で、「コンサルファーム」の中で生きることについてはやや疑問を感じている。

コンサルファームが「コンサルタントの集団」であればそこに違和感は無いのかも知れないが、特に近年のコンサルファームはどこもこのような存在ではなくなっていると思う。

恐らく、マネジャーになる位まではあまり意識する必要は無いと思うが、パートナーという立場が見え始めた頃から、「コンサルタント」であると同時に嫌でも「コンサルファームの運営」という側面が入り込んで来て、それがジレンマとなる。

 

個人的に、最近のコンサルファームは「プロフェッショナルファーム」とは言えない、と感じている。

昨日「『プロフェッショナル』とは何なのか」で書いた自分なりの「プロフェッショナル」たる要件に照らし合わせて考えると全く方向性が違う、と。

 

一番大きいのは、コンサルファームが極度に規模の追求に走っているということ。

以前から規模を追求する風潮は有ったが、少なくとも戦略系ファームに関してはそのような傾向はあまり見られなかった。しかし最近は異常とも感じる拡大をしているファームも有る。

 

規模の拡大が一概に悪いとは思わない。人員が増えることで多様な人材が揃い、ファームとして顧客に提供できる価値が上がる。ブランド認知や業績の安定性の面で、優秀な人材を得易い・・・等々。

しかし、「収益目標〇億円」(=労働集約的なこの業界では人員目標)だけを追求する姿勢が非常に強まっていることが危険。

(勿論、コンサルはこの辺はプロなので、外的(外部+スタッフ層相手)には綺麗なもっともらしいビジョンを描いて示す)

 

私の感覚では、コンサルファームの経営側の視点が全く変わってしまったと思う。

以前は「顧客に対して自分達は何ができるのか」と「スタッフの質をどう高めるのか」ということが主眼。どちらかと言えば「スタッフの質が高まれば、顧客への提供価値が上がる/増える」という感覚が強かったように思う。そのため、ファームの採用・育成にかけるパワーは恐らく他業界から見ると異常だったのでは、と。

 

しかし今は「スタッフの量をどのように集めて、上手く使いこなすのか」と「それを稼働させるために顧客に何を売るのか」ということが主眼。

「何を売るのか」という点については「戦略コンサルの変質」の中で触れたが、供給側の理由により案件が変化している。

 

プロフェッショナルな戦略コンサルタントは、本来的には先にクライアントが存在し、そのクライアントが抱える本質的課題を特定し、その課題解決手段を提言する、という形になる。

一方で今の「コンサルファーム」の仕事の考え方は、先に「自分達ができること」が存在し、それが「売れる先」を探す、という流れの方が強い。

 

また、最も良くないのが、顧客利益に反する動きが増えること。

 

今、「戦略を『絵に描いた餅』にしないよう、実行支援までしっかりと行います」といったことを謳うファームが多いが、実態を見ると、顧客にとって不要な案件の押し売りを行っているケースが非常に多い。

 

また、敢えて「顧客だけではできない」ように持ち込み、リピートに繋げる、という手法も常套手段。

人員を多く抱え、その水準も下がっているため、「いかに騙しながら売り捌くのか」に意識が移っている。

 

コンサルタントは「いかに早くその会社の支援から外れるのか」を追求した方が良い。

 

なお、規模の拡大は、以前であればメリットも大きかったと思うが、そのメリットも最近は薄れて来ていると思う。

その大きな理由が、案件の先鋭化・専門化。

これまでは必要であれば必要な知識をインプットする、ということでの対応を当たり前のようにやっていた。また、ファーム内に様々な専門性を持った人が居る、ということが強みになったと思うが、今は、都度必要な専門性を外に求めた方が良いと感じている。

 

戦略コンサルタントについては、「スペシャリスト」よりも「ゼネラリスト」としての性質が強いと感じている。

私の中で戦略コンサルタントとは「総合格闘技」。

 

以前のレベルであれば、必要な知識などを都度インプットする。その積み上げで各々の専門性みたいなもの(正確に言えば「得意領域」)ができあがり、その組み合わせで対応できていた。勿論、自身の学生時代の専門領域や、中途入社社員の場合には前職時代の経験も含めて。これをやるには一定の規模が有った方が良い。

そもそも、特定領域の知識や専門性は、戦略コンサルタントが提供する価値の「前提知識」程度であり、それが本質ではなかった。顧客に教えてもらうことも多かった。

しかし、今はこれでは太刀打ちできないことも多い。価値を出すために「不可欠」になっているケースが有る。

そのため、相当の専門性を持った人と協業することが必要になるわけだが、そうすると協業相手はファーム外になると思っている。

 

こうなると、スタッフを抱えている弊害の方が大きくなる。

今は「スタッフを食べさせるために案件を取る」ことに終始している気がする。本末転倒。

 

 

「コンサルファーム」は正面から顧客と向き合うことを避けている。

コンサルタント」に必要なのは「横綱相撲」。向かってくる相手を立ち合いでしっかりと受け止め、そこからじっくりと、かつ、圧倒的な強さによって勝負を決める。勝負までの手数は少なく、「ここぞ」という所で決め技を繰り出す。

一方で「コンサルファーム」は変化相撲。目先を変えて相手を騙す、ような感じ。

 

「コンサルファーム」が悪いというものではない。事業会社で働くのと同様に「コンサル」という商材の売上高を増やすゲームに勤しむのも否定されるものではない。

しかし、「コンサルタント」を追求するのであれば、そこに違和感を感じるべき。仮にここを理解しないで本気で「コンサルタント」を名乗っているとしたら、それは違うと思う。