プロフェッショナリズムを追求する旅

戦略コンサルタントという理解し難い職を通じて感じるところ等々、徒然に書いて行きます

コンサルタントは楽しいのか

「戦略系ファームの仕事は非常にハードだがやりがいが有る」

 

この業界への就職/転職を希望した方でファームの話を聞いた人であれば、このような言葉を一度は耳にしたのではないかと思う。

私もこの言葉は間違い無いと思う。

 

まずハードさの観点。これは「過酷」という表現が当てはまるくらいだと感じる。これは特に若手の量的な面(拘束時間)もそうだが、質的な面も相俟って感じる部分が大きいと思う。

拘束時間については慣れもあるし、タイトルが上がれば自由度も高くなる。私個人としてはそれほど辛いと感じない。むしろ、自由度が高いためQOLは上がる。

ここで「仕事(労働)時間」という表現を使わずに敢えて「拘束時間」を用いたのは質的な面に絡んで来る。

コンサルタントの仕事の進め方は事業会社と比較して圧倒的に密度が高い。同じ8時間でも、疲労度が大きく違うと思う。

 

加えて、コンサルタントの仕事がハードに感じる理由は、拘束時間自体は短くても、プロジェクト中などは常に仕事のことを考えてしまうため、気が休まる時が少ないということが有ると考えている。

コンサルタントの仕事は非常にプレッシャーが大きい。高額の報酬を頂き無形の付加価値を提供するという性質上、どれだけやっても最終報告会のその場に着くまで「本当にこれで良いのか」を自問自答し続けることになる。

そのため、気付くと案件のことを考えているという状態が生じ、拘束されているわけではないけれども実質的には仕事をしている、ということも起こる。

 

一方でやりがい。

どの仕事でもやりがいは感じると思うが、コンサルという仕事は提案~解決策(=製品)の提供まで一気通貫しているため、特に強く感じるのではないだろうか。

例えばメーカーであれば設計・開発・営業と分業しているものを全て一人(一つのチーム)でこなす。自分が考えた製品を自分で売る。

しかも、顧客が抱える大きな課題の解決手段という、非常に価値の有る製品を提供している。

やりがいは非常に大きいと思う。

 

ところで、視点を変えて、「コンサルタントの仕事は楽しいのか」という問い。

これは合う/合わないがかなりはっきりと分かれる。

「ビジネス」が好きで、難しい問題やパズルを解くのが好き、というような人であればかなり楽しめる仕事だとは思う。

しかし、若手のうちは特にそうだが、辛いことの方がはるかに大きい。純粋に「楽しい」と思えることは少ないはず。

 

これは「楽しい」という言葉の捉え方だと思う。

プロ野球選手のイチロー氏の言葉で私が好きな言葉が有る。

 

「『楽しんでやれ』と言われるんですけれど、僕はその意味がよく分からない。『楽しむ』というのは、決して笑顔で野球をやるということではなくて、充実感を持ってやることなんだと僕なりに解釈してやってきましたけれど、それに辿りつくまでには『楽しんでやる』というような表現はとてもできなかったですね。」

出所:「イチロー思考―孤高を貫き、成功をつかむ77の工夫」 

 

コンサルタントの仕事でも同様だと思う。

 

3か月間のプロジェクトの場合、「楽しい」という表現を素直に使えるのはせいぜい数日かも知れない。

しかし、報告会が終わった時の何とも言えない充実感、達成感は、味わうとくせになるものだと思う。そしてその時だけは素直に「やっぱりこの仕事は楽しい」と感じられる。

(仮にそこで楽しいと感じられないのであれば、プロジェクトに本気で臨んでいないか、コンサルの仕事に向いていないということだと思う)


私は「戦略コンサルはやっている時は辛いし、何が楽しいのか分からないけど、終わった瞬間に何とも言えない達成感が有ってくせになる」と思っている。

これは私の趣味(最近はなかなか行けていないが)である登山と同じ。

 

ま、なんだかんだ言っても楽しいですよ、この仕事は。