プロフェッショナリズムを追求する旅

戦略コンサルタントという理解し難い職を通じて感じるところ等々、徒然に書いて行きます

専門分野は先に宣言してから作る

コンサルタントとしてそれなりの期間を過ごしていると、ある程度「得意分野」と言えるようなものが見えて来る。

とは言え、これがそのまま自分の「専門分野」として武器になるかと言えば、そうではない場合も多い。

特に「戦略コンサルタント」は、かなり意識して取り組まないと専門分野は作れない。

 

まず、「戦略コンサルタント」という分類は、何か言っているようで実は何も言っていない。

強いて言えば、課題を設定し、その課題に対する解決方法を示し、顧客の経営層を動かす・・・というようなものが範疇にはなるのだが、これを「専門分野」と位置付けると「営業が専門です」と同じ位に漠としたものになる。

(とは言え、この「戦略コンサルタント」という括りで差別化を図り「専門家」として生きる道も有るが、これはごく一部の極めて優秀な方のみが選べる道だと思うので、今回はここには触れない)

一口に営業と言っても、取り扱う商材や顧客によって全く異なる仕事と言っても良い。その位の幅が出る。

そのため、業種・業界やテーマ等々、何らかの軸で絞り込むことが必要になる。

 

また、業種・業界であったりテーマによって得意分野が出来たとして、それが「専門分野」と言えるのかは疑問が残る。

そもそも、「専門分野」とするためには、「その分野への知見を高いレベルで有する」ことと同時に、「その知見によって差別化が出来る」ということが求められる。

前者だけでも「専門分野」(もしくは「専門家」)と称することは可能だが、それに何の意味も無い。

 

 

業種・業界の軸で専門分野を絞り込む場合、あまり狭いと「一業種一社」という縛りで展開が出来なくなる。

(これを気にせずに、ある企業のコンサルを行った後に、その競合企業のコンサルを平気で担当するファーム/人も居るが、これは倫理的に問題が有ると考える)

一方で、「アッセンブリ系の製造業」といったような切り口での絞り込みの場合、そこで「専門家」と名乗って顧客に対してその専門性により価値を提供するのはかなり厳しいと思う。

 

まず、主だった所は極めて競争が激しいので、専門性はできるかも知れないが差別化が出来ない。特に製造業や金融業などは専門家は多いと思う。

また、そもそも業種・業界軸での知見が求められる案件については、最近の傾向としてかなり専門化・先鋭化したテーマが増えていると思う。そのため、本当にこの軸で「専門分野」を築くのだとすると、コンサルタントとして取り組んでいるレベルでは難しいと考えている。

仮にできるとすると、若手のうちの5年程度の経験でも知見がかなり有効に働き、その知見が陳腐化し辛く、かつ、戦略コンサルへの転職者が少ない業種・業界に、その業種・業界経験者が中途で入った場合だろうか。

小売や教育、福祉関連などは行けるかも知れない、と思う。(深く考えた結果ではない)

勿論、Ph.Dを持っているような人は話が別。

 

結果として、専門分野を作るのであればテーマが望ましいと思う。

これはこれで難しいのは間違いないし、おおよその分野は専門家が居る。

とは言え、純粋な戦略コンサルタントとしてそれなりの勝負できるレベルになり、それに掛け合わせて、何らかの領域でしっかりと体系立てた知識・知見を得られれば、掛け算で十分に勝負できると思う。

人事やIT、会計等々、様々な分野で専門的なコンサルタントが居るが、しっかりと戦略を起点に落とし込めるコンサルタントは決して多くはない。

こちらは現実的かと。

 

私の場合、戦略×人事へのシフトを明確に意図している。しかし、現状で人事についてはまだ専門の人事コンサルと真っ向から勝負できるレベルには達していない。

そのため、ここについての集中的な学習を行っている。

 

 

そして、これらの専門分野の作り方について。

専門分野を作るためには、先に宣言してしまった方が良いと思う。

しかも、「私は〇〇を専門分野としたい」ではなく、「私は〇〇の専門家です」と。

 

実は私の戦略×人事へのシフトも、人事案件を殆どやったことがない状態で宣言したことから始まっている。正確には宣言したというような改まったものではなく、さらっと「人事は得意分野です」という感じで。

「できる」と宣言してから必死で勉強するのが元からの私の基本スタイル(良いか悪いかは別として)だが、その極みのようなことをやっている。

 

私は元々、全くと言って良いほど専門性が無い。

強いて言えばデジタルを絡めた新規事業や情報技術関連なのだが、いずれも変化のスピードが速く、コンサルでは付いて行くのが厳しいと考え、今のファームに移って以降はなるべく触れないようにしている。

それにより、どのようなテーマにでも対応できるという戦略コンサルタントとしての一つの武器を手に入れたが、さすがにどこかに専門性を持たないと厳しいと思っており、興味なども考えて戦略×人事へのシフトを図っている。

 

取り敢えず現状で、今の私を知る人は「組織・人事系が強い人」というイメージを持っている場合が多いのではないかと思う。

とは言え、まだ実は片手程度の経験数なのだが・・・と思ったりもしている。

 

少なくとも「これが私の専門分野」と宣言し、そこに向けて必死で勉強しているうちに、余程間違った分野を宣言しない限り道は拓けると思う。

やはり、宣言することで自分のアンテナの感度が上がるし、「専門家」になってしまった以上、下手なことはできない。周りからの話の入り方なども変わる。

 

取り敢えずここからかと思う。