プロフェッショナリズムを追求する旅

戦略コンサルタントという理解し難い職を通じて感じるところ等々、徒然に書いて行きます

戦略コンサルタントは「高さ」ではなく「深さ」で勝負する

戦略コンサルタントの提言内容について、その「答え」だけを見ると、至って平凡なものである場合が殆どではないかと考えている。

ごく稀に、非常に斬新な発想が生まれたりするが、多くの場合、どこかで見たことが有るような提言に終始すると思う。

 

この点は、顧客の期待値コントロールにおいても重要だと思っている。

提案の際に「誰も思い付かないようなアイディアを出して欲しい」という要望を受ける場合が有る。しかし、そのような場合には明確に「それは保証できない」と伝えている。

結果として新しい切り口が見付かったり、顧客が全く考えてもいなかったアイディアを示すことが出来たりする。

しかし、この場合にも多くは、単に「顧客が知らなかった」という情報の非対称性故に「新しい」と感じているものと思っている。

 

そもそも、戦略コンサルタントの勝負のポイントは、そのようなアイディアの新しさであったり、更には高度な専門的知識等ではないと考えている。

アウトプットの「高さ」という点では、決して高くない。

「高さ」で勝負するためには、特定領域に対する極めて高度な専門性を有していることが必要だと思う。少なくとも顧客側に備わっていないもの。

戦略コンサルタントにそのようなものは備わっていないと思う。

 

では、戦略コンサルタントは何で勝負するのか。

私は「深さ」だと捉えている。

 

ある事象を見た時に、顧客が認識する深さとは異なる次元で認識する。洞察をする。

それにより、複雑に絡み合った事象を解きほぐしたり、別個のものと認識している事象を一つのメカニズムとして捉えたり。

「掘り下げる」と呼ばれることだが、これにより、確かに表層的には同じ事象なのだが、全く異なる認識となる。

認識が変われば、発想も全く変わる。

これにより、顧客の頭が切り替わる。

 

結局、戦略コンサルタントが示す提言の中で「新しい」というのは、その発想自体が「新しい」のではなく、認識の仕方が「新しい」(今までよりも深い)ということ。

そのため、認識に対する発想自体はごく平凡と感じることも多いと思う。

 

なお、このような前提に立つと、戦略コンサルタントのプロジェクトを、提案時もしくはプロジェクト開始時の作業設計通りに進めることが必ずしも良いと言えないことも少なくないと考えている。

私は結構やるのだが、そもそもプロジェクトのテーマ自体を途中で全く異なるものに変える、ということも必要だと感じている。

 

掘ってみなければ何が出て来るのか分からないのが戦略コンサルタントの仕事。

そのため、企業経営に関わる基本的な知識は網羅的に習得していることが必要だし、それらを組み合わせ、範囲を限定せずに考えることが必要。

 

「高さ」が必要となれば、その時に専門家を呼べば良い。

その代わり、「深さ」についてはかなり徹底しなければならない。

 

そんな仕事だと感じる。