言語化する能力を鍛える
コンサルタントに求められる能力の中で、特に「言語化」は意識的に鍛えることがかなり重要だと考える。
コンサルタントの優劣を決める能力の中で、例えば頭の回転などは生まれ持った資質が大きいので、正直、どうにもならない部分が有る。着眼なども感覚に近いもので、意識して鍛えることが出来るかはやや懐疑的。(勿論、ある程度は訓練で行けるが)
他の調査・分析等のスキル的要素は、「意識的に」と言われなくても意識すると思う。むしろ、これらを意識的に鍛えないような人はコンサルタントとして生きていけない。
しかし、「言語化」だけは意識的に鍛えなくても、ある程度までは行ける。恐らく、この能力が大きく影響して来るのはマネジャーとして独り立ちした頃から。この頃にはあまり上位者から能力に関する指導などが入らなくなると思う。
また、「言語化」はあまりそういった指導の対象になり辛いと思っている。正確には、「言語化」をコンサルタントに求められる能力として意識している人が実はそれほど多くない、と。
コンサルタントの仕事を分解した時に、「考える」の後に「伝える」が入る。
この時、「伝える」についてどちらかと言えばビジュアル表現が重視される傾向が強いと思う。PowerPointのスライドと言った方が分かり易いだろうが、「チャート」を如何に上手く作るのか、に意識が行き易い。
しかし、チャートは非常に危険。
そもそもコンサルタントが考える内容について、重要な要素ほど抽象的・概念的になる。その時にチャートを使った表現だと「抽象的なものを抽象的に表現する」ということで終わりがち。
これは、確かにその時には伝わるのだが、恐らく、説明を聞いた本人しか理解できない(他の人に伝えられない)し、その人の中でも時間の経過と共に霧が立ち込めて行く。
相手を動かすには、抽象的・概念的なものであっても「言語化」することが重要。これができて初めて相手の心の中にコンサルタントが考えたことを植え付けることが出来る。チャートはあくまでも補足手段。
良い本とそうでない本の違いもこれだと思う。
良い本と言うのは、作者の考えが非常にしっかりと言語化されている。それにより、読者の頭の中でモヤモヤしていたことが一気に晴れ、ストンと腹の底に落ちて来る。
コンサルタントもこのようなことが必要。
では、これを鍛えるにはどうするのか。
これも量をこなすことがまずは大前提。私はそのためにブログとTwitterを使っている。
私がブログのようなものを書き出したのは「20世紀」。1999年頃。(当時はブログというものを少なくとも私は認識しておらず、自分で立てたサーバにアップした日記的なもの)
その後も、サービスを色々と移したり、非公開で書くようにしたりと、色々変遷して今年からこのサービスを使っている。
元々私は、この「言語化」が非常に弱かった。
これは私の考え方の癖なのだが、そもそも頭の中で絵で考える。手元に紙を置いていても、湧き上がって来るのが絵なので、書(描)いているのも殆どが絵。「要するにこんな感じ」という概念図にいきなり落ちてしまう。
これは私の決定的な強みでもあるとは思う。雑多な情報を頭に入れると、いきなり抽象的・概念的なものに落とし込める。
しかし、これを相手に伝えるのが非常に苦手だったし、今でもここが最大の課題だと感じている。マネジャーになった頃、「答えを出す能力は既に完成しているが、それを紙に落とせていない」という評価を受けたことが有る。
そのため、この時期が一番、ブログをせっせと書いていたと思う。
ブログ、Twitterは非常に良い。気軽に使えるし、反応も見える。特に、自分の考えに対して他の方が意見を被せて頂くと、そこから考えが更に進む。
また、Twitterの文字数制限はコンサルタントとして求められる「言語化」の性質に近い。これはやらない手は無い。
私にとって最近のブログ、Twitterは、この「言語化」の能力を鍛えるということに加え、自分がモヤモヤと考えていることを言語化することで「固める」という2つの目的を担っている。いずれの観点でも非常に長けたツール。
ブログ等を使い、自分の考えを一気に言葉に落とし込み、見てもらう。これを繰り返すだけでもだいぶ能力が高まると思う。
量をこなすということに加えて意識した方が良いと思うのは、「考えをまとめるためにPowerPointを開かない」ということ。
コンサルタントは何となくPowerPointで表現するというイメージが強いし、実際に、PowerPointを開いて固まっている人が居る。
これは絶対に避けた方が良い。
まず、考える段階は「紙とペン」。これが絶対。
一番表現の幅が大きいのがこのデバイス。頭の中で湧き上がるのは文字だけでもないし絵だけでもない。下手したら色とか音。
さすがに音を表現するのは難しい(楽譜を書ける人は別)が、どれにでも対応できる。
考えを落とし込む時にはPCを閉じて、ペンを持って紙に向き合う。これが良い。
そこである程度考えを固めたら、Wordを開いて「言語化」をする。
紙とペンに比べて、修正がし易いのがWordのメリット。
まずは自分の考えをしっかりと言葉に落とし込む。私の場合、取り敢えず考えていることを一気にWordで打ち込む。
その上で、それを徹底的に推敲する。自分の意図した通りに伝わるのか、用いた単語が相手に与える印象はどうなのか、等々。
これを行っていると、考えの甘さにも気付く。何となく考えている際には詰め切れた気がしていても、いざ言葉に落とし込むと穴が有る。これを埋める。
そして、最後に余計な文言を削ることで洗練させる。
PowerPointは最後。あくまでも形式を整えるための道具。PowerPointを開いてから固まるのは絶対的に良くないことだと捉えた方が良い。
(とは言え実際には、特に提案の前段階の資料などでは、考える→言語化する→伝える、を一気にやるためにPowerPointを広げて考えることも有るが)
Wordに向き合っていると、PowerPointに逃げたくなる。これは、チャートで表現した方が楽だから。しかし、ここで逃げないこと。とにかく言葉に落とし切る。
これを繰り返し、できれば他の人に見てもらうことで、「言語化」の能力は高まって行くと思う。
ちなみに私はブログでは殆ど推敲しない。上記に照らすと「取り敢えず考えていることを一気に打ち込む」ことがこのブログの位置付け。Twitterは文字数を削る訓練をすることは有るが。
この点については、将来的に別のブログで「考えをまとめてアウトプットする」ということをやろうと思っている。その際に徹底的に推敲したいと考えている。
(最後は、このブログの言語化レベルが低いことの言い訳)