プロフェッショナリズムを追求する旅

戦略コンサルタントという理解し難い職を通じて感じるところ等々、徒然に書いて行きます

上位者のレビューは怖かった

昼間に、こんな感じに偉そうなことを書いてみた。

 

振り返って自分の若手時代。

 

マネジャーの中頃まで、とにかく上位者のレビューを受けるのが怖かった。

今振り返ると、積み重ねた経験・洞察から来る迫力。とにかく「圧」が凄かった。

パートナーの前に立った瞬間、既に「負け」た気がしていた。

上位者のレビューがゴールになっていて、その後の顧客とのミーティングは「ついで」くらいの心境になっていたと思う。「いかにレビューを乗り切るか」という狭い視野。

見る相手を間違っていた。

 

どれだけしっかりと考えたつもりでも一瞬で崩される。最初から否定することが前提でレビューに臨んでいるのでは?と思うほどに。

だが、その後にじっくりと考えると、間違い無く上位者に理が有る。ぐうの音も出ない程に・・・。

 

しかし、徐々にパートナーの関与が減り、自分が顧客と対峙する立場になることが多くなると、上位者のレビューよりもパートナーが後ろに控えていない顧客とのミーティングの方が数段「怖い」ということを思い知らされた。

特に自分が主体的に提案して案件を取り出した頃はファンド相手の仕事が中心。毎回、刀が刺さった状態でオフィスに戻っていたような気がする。

 

今振り返ると要因が非常に良く分かる。

 

上位者に瞬殺されるのは、そもそも考えるアプローチ自体が違うから。

 

当時は「1ページの資料を数秒で否定するなんてできるはずがない」と考えていたのだが、別に全ての情報を読んで否定する必要など無い。

考えるアプローチ、視点が違うということは、軸の切り方で瞬時に分かる。それ以上読む必要性が無い。

今は自分でも、ページをめくった瞬間に「違う」と判断できる。逆に、自分がイメージしていた視点と違うけど「引っ掛かる」紙も瞬時に判断が付く。

後者は、自分では考えていなかったけど、一考の価値が有る資料。じっくりと読んで、そこから議論を開始する。これは、スタッフの基礎的な考えに対して、私の考えをぶつけ合わせて昇華させるべき対象。

スタッフの大きな付加価値。これを出せないと価値が無い。

 

また、そもそも自分の中でも確固たる自信となるまで考え込めていなかった。要するに考えが足りない。だから「怖い」という感覚になった。

 

同じ「瞬殺」でも2段階有ると思う。

最初の段階は、どこを守って良いかも分からずに臨み、めった刺しされる時期。これは根本から分かっていない状態。箸にも棒にもかかっていない状態。

アナリストの初期はこれが多かった。

2段階目は「ここを刺されそう」と、何とかそこを守ろうと臨み、結局守れずに一気に刺される時期。

アソシエイトになる頃には、凡そどこが刺されるのか分かって臨んでいる感覚が有り、マネジャーになった頃には「ここさえ突かれなければ逃げ切れる」と目論み、そこをピンポイントで突かれて・・・。

 

実は、この2段階目に達しているのは相当に成長していると思う。

自分で「穴を見付けられる」状態になっているということは、全体としての要所であったり、自分のアウトプットに対する目利きができるようになっているということ。

若手が目指すのはまずはこの段階に早く達すること。

 

 

ターニングポイントがいつ訪れたのか記憶に無い。

しかし、あるタイミングから顧客の考えなどがかなり読めるようになった。「場」の流れを掴めるようになった。

それと同時に、プレゼンの能力についての評価が飛躍的に高まった。

そして、それまで凄い(ファーム内でも「悪評」高い)マイクロマネジメントだったパートナーが、殆ど口を出さなくなった。一応節目で報告に行っても、ざっと聞いて「いいよ」としか言わない。

(挙句の果てに、そのパートナーを最終報告に呼ぶのを忘れて(行きのタクシーの中で声を掛けていないことに気付き)済ませてしまった・・・:事後報告に行ったら「無事終わった?」とだけニコニコと聞かれて終わった)

 

どの案件の頃なのか、振り返っても思い出せない。

けれども、気付けば流れるスピードがゆっくりに感じるような、そのような変化が有った。

 

過去のパートナーが作った資料の「凄み」を感じるようになったのも、この頃だったと思う。それまで「大したことない」程度に思っていたスライドの途轍もない奥深さを感じるようになった。

 

この転換点。

多分、コンサルタントのキャリアの中で一番重要なポイント。しかし、実際にここに辿り着けるのはごく一部だと思う。

 

この転換点を超えると世界が全く変わる。

コンサルタントという仕事の楽しみが格段に上がる。

コンサルタントという仕事の深みへの絶望感が格段に上がる。

そして、コンサルタントという仕事の怖さが格段に上がる・・・。

 

これは味わった方が良い。