言葉を駆使して相手を動かす
戦略コンサルタントにとって唯一無二とも言える武器が「言葉」。
この仕事を行っていると「自分で動きたい」という衝動に駆られることも多いが、基本的に立場としてそれはできない。
主体的に関与することを積極的に進めているファームも有るが、本来的にそれはコンサルタントとは言えない(とは言え、そのことを否定しているわけではない:コンサルタント≠コンサルファームであり、価値提供の形/ビジネスモデルとしてそれも一つの正しい形)。
自分で動けないから、相手に動いてもらうしかない。
コンサルタントの提言は、提言時点では何の価値も無く、それを基に顧客が動いてくれて初めて価値が生まれる。
その際に使えるのは「言葉」だけ。
両手足を縛られた状態で、言葉だけを使って相手を動かす。それが戦略コンサルタントの仕事。
日本人相手であれば日本語能力。
戦略コンサルタントは基本的に、経営者と同じ言葉を母語とする人でなければ、しっかりとした価値を出し切れないと考えている。
差別的な発言になってしまうが、その位に言葉は重要。
(コンサルの提言の前提には価値観や思想が有り、その価値観や思想は母語に影響を受ける要素が大きいと考えているため、仮にネイティブ「同様」に英語を喋れる日本人であっても、英米人の根っこに有る価値観・思想を理解するまでは至ることができないと考えていることも理由)
言葉に関する能力で重要なのは
- 論理を的確に表現し、相手に理解させることができる文法能力
- 相手の思考を誘導できる語彙力(フレージング能力)
の2つ。
文法については特に接続詞と助詞。この2つを駆使して、相手に理解してもらうことが大前提。
その上でフレージング。
組織や人に根付いた意識や固定観念を打ち破って自分の考える方向に相手の思考を誘導するためには、自分の考えていることを端的に理解できるようなフレーズが必要。
ここは敢えて横文字を使ったり、棘の有る表現を使ったり、比喩表現を使ったり。しっかりと相手の頭に引っ掛かり、グイっと強く引っ張っても外れないような、釣り針のようなフレーズ。
プロジェクトの中で、実は一番肝になるのはこのフレーズを作ることだと思う。
ちなみに、経営トップに初めて会う時にもこの能力が非常に威力を発揮する。
往々にして経営トップは「自分の思っていることが伝わらない」という悩み(苛々)を抱えている。
経営トップの想いを徹底的に聴き、構造的な整理と気の利いたフレーズでまとめ上げる。これを初めて会ったその場で行う。
これが上手く行った時には、一度で信頼を得ることができる。
「言葉」に強くなるためには、自分が書いた文章を徹底的に赤入れしてもらうことと、数多くの良質な文章に触れること。
特に若手のうちは、上位者に赤入れをお願いし、徹底的に叩いてもらうと良い。
とは言え、これは赤入れする側としても非常にタフな作業になるので、相当に期待しているスタッフが相手でなければ継続してはやらないが・・・。